待ち合わせに遅れた男の話
2010年9月26日コメント (3)いろいろあって、今日は仕事着(ジャケット)のままBMへ。
少しセットした髪と右手には花束。訳あって少し急いで。
フォーマルな格好で花束を持って。時計を気にしながら小走りに急ぐ姿は、
プロポーズに行く前のようだなと思いながらも、
日本橋と言う場所柄か、それなりに自然に受け入れられた。
メイドさん達の視線を感じながらも、釘付けにしていたのは花束で、
やはり花が嫌いな女性はいないのだなと思った。
花よりも、君の方がいい香りがするよ。
そっと後ろから近づいて、耳元で気の効いた台詞を囁きたかったけど、それではただの変質者。
もう少し大人になってからだね。
やがて目的地に着く。
「おーkingやんー。なんで花束持ってるん!?」
そのツッコミは正解だ!でもごめん。今の僕には時間がないんだ。
「まぁいろいろあるんだよ」
さらりとこんな台詞が出るくらい、社会の荒波は僕を立派な大人にしたようだ。
初秋の風が少し冷たい。そして立派な大人はこんな時間に日本橋にいない。
「ごめん!待った?」
そんな言葉をかけようとするが待ち合わせ場所を見渡しても探していた人はいない。
どうやら既に二人で食事に行ってしまったようだ。
どうする?花束よ。お前はどうしたい?
決まってる。食事場所まで追いかけるさ!
右手には花束。これではただのストーカーだ!
局長が誕生日ということを小耳に挟む。
もはや花束は僕の右手を占有するだけのものでしかない。少し重い。
「ハッピーバースデー!」
便利な言葉だと思った。
小走りに僕はお店に着く。
この店に来たという確証はない。
でも、僕には不思議な確証があった。
「おひとりさまでしょうかー?」
違う。僕は人を探しにこの店に来たんだ。
「いえ、大丈夫です」
何が大丈夫なのかわからないが、そう言って店に上がりこむ。
コーテルイーガー。遠くで不思議な言葉が聞こえる。
そうして僕は店内を見渡した!
・・・
結局探し人はいなかった。
今日は会えない運命だったのだろうか。
少し肩を落としながら、僕は一人店を出た。
初秋の風はずいぶん冷たくなっていた。
力なく上げた手に、黄色いランプが音もなく呼応する。
「お客さんどちらまで?」
「谷町九丁目」
「はいよ」
見慣れた景色が後ろへ過ぎる。
遠くへ過ぎ去ってしまった目的地に、僕はため息まじりに言葉を残す。
「ハッピーバースデー」
コメント
帰りめっちゃ人に見られた上に持って帰るの大変でしたw
来週の予定はいかがでしょうか?
あと木曜レガシーに参加するかも。